I can fulfil a promise soon.
Even if you do not remember it の続編
☆オリキャラ☆寺宮 稀乃(きの)
女の子。 鉄角の幼馴染で鉄角が好き。バドミントンが世界ランクで冬季オリンピックで銀メダルをとった。 真くん呼び。さくらの存在が邪魔だと思っている
さくら→←真←稀乃
十年前、俺は友達よりも深い関係の女の子と約束をした。‘‘それぞれの夢を達成したらさ、俺とさ永遠を誓ってくれないか?“ って。それぞれの夢っていうのは、彼女は新体操。俺がボクシングで世界一をとったらという意味だ。簡単にいうと、オリンピックで金メダルを取ってくるってことだ。
いつになるのか分からないが、俺たちは互いを信じて夢へと突き進んだ。“友達”以上の関係になれなかった十年前の俺たちに戻らないように。写真に写る無邪気な少年時代と同じにならないように。
もうすぐさ、迎えにいくから。だから、待っていてくれ__
☆
シャッター音がカシャカシャと鳴り響く冬空。沢山のフラッシュに俺は思わず目を細める。首から下げられたキラリと光り輝く黄金のそれは冬の成田に輝き、ずっしりと重みがあった。冬季オリンピックの会場からすぐに飛行機で帰ってきた俺にとって、テレビのカメラより憂鬱なものはなかった。
試合が積み重なるごとによって、その分の疲労が比例してたまっているのに、時差の関係でさっきまで夜だった俺の頭は、冬の冷たい朝日が顔に照り付けて混乱していしまっているだろう。
「鉄角さん、早く行ってください。時間が押しているので。」
「あ、はい。」
素直に小さくうなずくと、今度はくるりと後ろを向いた俺のマネージャーさんはほほ笑んで「車にツナマヨと鮭のおにぎりあるらしいですよ」と告げて、前に向き直った。
ツナマヨと鮭のおにぎりと聞いて、さっきの憂鬱は空のかなたへと飛んで行ってしまう。惑星キエルに届いてしまくらいに。ツナマヨと鮭のおにぎりは、俺にとってとてもトクベツだった。十年前のこと。夕食が終わっても食堂に来ない彼女を心配して、彼女の自室に寄ったのがきっかけだった。俺がおばちゃんにおにぎりを作って貰おうと思ったら、おばちゃんが「あんたが作ったほうが元気でるんじゃないかな」と言われたのを今でも覚えている。そのおにぎりは俺と彼女とふたりで食べた。それがおかか、ツナマヨ、鮭の3種類。鮭だと思われるおにぎりを食べたらツナマヨで、彼女は鮭だったという面白いことがあった。それから、俺はおにぎり食べるときは必ずツナマヨと鮭にしていた。ツナマヨを見ると、ついこのことを思い出してしまっていた。思い出すのもの当然。何故ならそのとき俺は彼女と想いを伝えあった。真っ暗な宇宙のふたりっきりのあの部屋で。あの恋愛は俺にとっての初恋だった。確かに、
俺の周りに女の子がいなかったからかもしれない。が、アースイレブインに会う前に俺は仲のいい女の子がいた。幼馴染の寺宮稀乃という2つ年下の女の子で"幼馴染"というだけで互いに恋愛感情はなかったはずだ。
昔の思い出でに浸っていると、黒塗りの車が目の前にあった。ベンツとかそういうクラスの車には、黒いスーツを着た人たちが数人たまってとても物騒だった。まるで俺が死んだ人みたいじゃないか。声に出さずに心の中で笑っている
と、黒いスーツを着た男の人が何も言わずに、車のドアを開けた。
「あ、どうも」
思わず口に出すと黒いスーツを着た人は一礼をした。すぐに乗り込むと置いてあった真っ白な皿に、ラップがかけられたおにぎりが4つあるのがすぐに目についた。
早速ツナマヨのおにぎりを食べ始めると、マネージャーさんが「ホント、好きですよね~」と微笑みながら隣に座ってきた。みんな揃ったのが分かったのか、ゆっくりと車は動きだした。
「そういえば、新体操ってどうだったんですか?」
隣でケータイをいじっていたマネージャーさんに、何気なく聞いてみると、驚いたように俺を見るとケータイをいったん閉じて口を開いた。
「新体操は野咲さくらっていう新人さんで、鉄角さんのひとつ年下の女の子が金メダルよ。」
「え?野咲さくら?あのピンクの髪の毛の?」
“さくら”という名前を聞いた瞬間、心臓がドキンと脈を打つ。そのおかげで、持っていたツナマヨおにぎりは宙に舞ってしまった。あの“さくら”は確かに俺よりひとつ年下で、ピーチ色の可愛らしい色の髪の毛の持ち主。おにぎりを一緒に食べた“彼女”だ。こんな偶然あるのだろうか。俺は初めて出場したオリンピックで金メダル取り、さくらも初
めてのオリンピックで金メダルをとるなんてこと。
「そうですよ。髪の毛の長いさくらさんです。もう、すでに帰国しているらしいですし。あっそうだ。次の番組で金メ
ダリスト全員でるらしいので、そこであえるかもしれません。」
長い髪…。やっぱり十年後なんだから、髪の毛も伸びるよな。さくらも変わったんだな。そう思うととても不安になってきた。あの約束覚えていないんじゃないかと。俺だけ叶えようとして、ひとりで頑張ってきたのかもしれない。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「それでは、控え室はここです。出演時間までのんびり過ごして下さいね。」
マネージャーさんはそれだけ伝えると、腕時計を見て慌ただしく駆けいってしまった。ひとり残されたテレビ局の廊下にいるのも悲しいので、用意された控え室のドアノブをグリリと回す。冷たい金属が体温を低くしていく。東京は寒いな。海外のほうがもっと暖かい気がする。
「ねえ、あなた出演者?探している人がいるの。」
不意に俺の後ろから、少しだけ大人びいた女の人の声がした。十年前のあの彼女のような、透き通った鈴の音のような声。
「ああ、そうだ。」
振り返って握手を求めようと手をさしのべると、彼女はとても驚いていた。
そして、手をさしのべた俺も彼女に驚いていた。何故なら、ピーチ色の可愛らしい腰まで伸びた髪の毛、透き通った水色の瞳。十年前の"彼女"が大人になった姿だった。
「もしかして、鉄角?」
「ああ、そうだ。野咲だよな、久しぶりじゃねぇか!」
俺は十年前のように二ッと笑うと、首から下げられた黄金に輝くものをじぃーと見た。
「ふ~ん。やっぱり同じなのか。」
俺は黄金のそれを突っつくと自分のものと見比べた。
「当たり前でしょう。同じ会場なんだから!」
さくらは応えると、クスクスと笑だした。それにつられて俺も笑いだすと、一気に昔に戻されたような感覚がした。昔はいつもこんなふうにふたりで、笑っていたものだった。
「・・・あのさ、十年前のことだけどさぁ、覚えてる?私は覚えているよ。」
さくらは懐かしむようにして目を閉じて、俺の答えを待っていた。
「ああ、覚えているぜ。」
短く返事をするとさくらは「ハハ」と頭をかくと、照れくさそうに口を開いた。
「あの約束さ「あ~!真くんここに居たのぉ~?探したんよぉ~!」
猫なで声で抱きついてくるのは、さくらのひとつ年下の寺宮稀乃。俺の幼馴染でバドミントンで世界ランクの実力の持ち主だ。レモン色の肩までつかないショートカットだ。
「誰?あんた。稀乃の真くん取らないでくれる?」
「は?稀乃、なんて言った?いつからお前のものになったんだよ。」
さくらはポカーンとしてしまっていた。稀乃が話を遮ったのに驚いたのか、さっきの稀乃の発言か。あるいわどちらとも。
「とりあえず、真くんは控え室に入りなよぉ~。さっき帰って来たから疲れてるもんねぇ~。こんなピンク女にかまってるヒマなんてないのにねぇ~。」
稀乃はニコニコしながら、控え室のドアノブを回して俺をドンと強引に押された。
ドアを稀乃が占めるとき何気なく廊下を見ると、さくらが悲しそうに俺を見ているのが目に入った。そのさくらの表情を見て胸がキューと苦しくなった。何にも言ってあげられない無力さが情けなかった。この黄金色も輝きは偽り。十年前、俺は世界一になったらあの頃の俺より強くなっていると思っていた。でも、違った。全然俺は変わらない。ずっとあのまんま。ごめん、野崎…。
ひとつ壁の向こう側、ふたりのひそひそと話す声が妙に大きく聞こえた。
__真くんの隣は私じゃない__
__やっぱり私たちは幼かった__
__永遠なんて誓えないくらいに__