拓天小説
空のプリズム
「雨、降らなかったな。」
9月8日、雷門中の体育祭の日。降水確率80%雨は降っていなかった。灰色の雲が広がり、湿った空気が、俺たちの体温を下げた。登校中、霧野が空を見上げて、安心したように笑った。
今日延期になってしまうと、土曜日から月曜日にかわってしまう。霧野はそれが嫌らしかった。霧野は、会場係りで、テントをたくさん張ったらしかった。俺は、決勝審判だ。
「緑団、頑張ろうな。俺たちなら勝てるよ。」
「ああ、そうだな。」
霧野は空にガッツポーズをした。それを見て、隣で俺は笑っていた。
「神童さん、霧野さん、おはようございます。今日は敵ですね。」
すれ違うときに、天馬がそう言って風のように駆け抜けた。
「待って!天馬!」
西園が天馬の後を、黄色のはちまきをして追いかける。
そこにいた狩屋と剣城と影山が、笑っていた。
「天馬、どうしたんだ。忘れ物か?」
3人に話を聞こうとして、近づいた。が、隣でピンク色がチョッパヤで、狩屋に抱きついた。
「ぐぇっ。」
狩屋が苦しそうに、声を上げ、顔をしかめた。狩屋の隣で、赤いはちまきを持ち、怖い顔をした剣城がいつもよりも低い声で、「おい、デスソードでも、何でも打てますよ。霧野さんに。V3がいいですか?」と聞いていた。
だめだ。狩屋と霧野、剣城は。となると、影山だ。
「なぁ、影山」
「天馬くんですか?それなら、はちまきを忘れたみたいですよ。信介くんはお弁当。間に合うといいですね。」
影山は隣のいくさ?は目に入らないみたいで、無邪気に笑った。
「あと、神童さん。ホモリアって、どうすればいなくなりますか?毎朝、こーんな感じで、すっごい困ります。」
隣を見て、影山は笑いながらつぶやいた。
「えーと。海外につれていったらいいんじゃないか。」
笑ってかわすと、影山は「そーですね!ホモは日本にいて、ホモリアは海外にいればいいですよね!」と言うと、ひとりで、学校に入ってしまった。
「神童、先行ってるな。」
霧野は上機嫌で学校に入っていく。
「ああ。」
霧野を見送ってから、校門の塀によりかかった。
ホモリアか、確かに狩屋と剣城はホモリアだ。確実に。あのふたりのような、ホモリアになりたい。天馬の恋人になりたい。守ってやりたい。そばにいたい。なのに、色は緑と青。敵同士。サッカーをしているときは同じなのに。体育祭は違う。本当は優勝なんかしたくない。なのに!
ポタリとひと粒、天から降ってきた雫が、アスファルトを濡らした。またひと粒、ふた粒濡らした。目からも雫が降りる。両目からぽろぽろと流れ出して、止まらない。
「神童さん、どうしたんですか。濡れちゃって。もしかして、待っててくれたとか!」
黒いチェックのカサが俺と天馬のふたりで入る。ポツポツとを立てる。
「ああ」
「そーいえば、降水確率が80%でしたよね。今日かけてたんです。20%晴れるから、もしも晴れたら神童さんに伝えるって。大切なこと。」
天馬は決心したように、うなずく。
「天馬、俺もなんだ。」
「じゃぁ、いっせーので言いましょうよ。」
天馬はカサを持つ手を放して、俺の手を握る。
「せーの!」
「天馬、好きだ。」
「神童さん、好きです。」
「全く、はちまき忘れたとか嘘ついちゃって。」
信介が折りたたみ傘を、閉じてくすりと笑った。
雨はあっという間に、上がって七色のプリズムの光がが輝いていた。
空のプリズムでした☆
虹は好きな人と見ると結ばれるらしですよ。
これは、pixivで拓天の日に出したものです。
気に入ってくれるとうれしいです。